ケノティズム

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(ネタバレ注意)ブレードランナー2049の感想うろ覚え

ブレードランナー2049には宇宙の真理が垣間見えたのでオススメ。

 

一押しのシーンはレジスタンスのボスに真実を告げられた後、ボスが主人公に同情をかけるシーンだ。ちなみに前作、ブレードランナーの一押しシーンはタイレル博士とレプリカントの会話シーン。

 

サイバーパンクな世界観。高度な技術がありながら、世界は相変わらず、いやより一層混沌としている。なぜ世界はこんなにも複雑なのか。今作は前作とは違った角度からこの問いに迫ったようにみえる。

 

前作にはゆとりがあった。博士は無防備にレプリカントを受け入れ、レプリカントもまた死に際にブレードランナーを生かした。互いを許容しようとしても対立は避けられず、それでも何かを残そうとする。それが複雑なこの世界なのだ、というメッセージを感じた。

 

今作では大停電や食糧危機の後のせいか、ゆとりが無い。主人公を取り巻く人々は敵に対して態度をブラさない。前作のように許容せず、対立するものがいなくなれば、世界は単純になるだろうか。そうではないだろう。はじめ組織に従順だった主人公は、やがて追い詰められ、レジスタンスと接触するうちに自分の特異性と可能性を信じ始める。しかしそれは幻想だった。「誰しも自分だと思うものよね」ボスの同情はボス自身にも跳ね返る。自分の可能性を信じる。自分こそは救われるべきだと思う。この使命こそは正しいと信じる。この情報こそは残すべきだと信じる。どんな支配構造を持ってしても、溢れ出すあらゆる情報が自身を信じ、入れ替わりを続ける。だから世界は複雑なのだ、そう言っているように見えた。

 

主人公は自身が感じる正しさを選び、その成功を見届けた後、雪降る寒空に一人死んでいく。本当に正しかったのか、その先どうなるのかわからないまま、虚しく消えていく小さな存在の美しさ。「白のブレードランナー」とはこの事を指していたのかもしれない。